2015年4月4日土曜日

ストリンドベリ『痴人の告白』 En Dares Forsvarstal 1888

スウェーデンの作家ストリンドベリの長編小説。最初の妻との出会いから破滅に至るまでの告白小説。


ストリンドベリは生涯3回結婚をしており、これは最初の結婚の顛末を綴ったというか、ドキュメンタリーとしての小説。登場人物は仮名となっているものの、自らの経験を書いているのであろう。もちろん作家である以上意図的な創作部分もあるかもしれない。更に精神がおかしくなって妄想を書いているのかとも思わせる小説である。

軍人である若い男爵及びその夫人と知り合い、やがて親友になる。夫人と相思の仲になる。男爵夫人は舞台女優志望であった。夫と別れ作者と一緒になる。夫人はそれ以降作者の愛人から闘争の相手に変身する。ともかく後半ではあまりに夫人の不実さを攻撃しているので、それが作者にとって真実であったにしても読者の共感を得られなくなっているほどだ。

先に破滅までと書いたが実際に夫人と離婚が成立するのは小説後3年たってからである。
これほど赤裸々に夫が不満を持つ妻への感情をぶっつけている小説は文学史上ないであろうと思わせるくらいで、一般的な文学的感動が遠くなっている。

そのためこの小説は昭和45年の講談社版世界文学全集に収録されて以来一度も出版されたことがない。後に講談社が文学全集を再編集販売した際もイプセン/ストリンドベリ集には『令嬢ジュリー』ほかの戯曲が収められた。
本作はストリンドベリファンでないと付き合いにくいと思われる。
山室静訳講談社版世界文学全集24巻(1970

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